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『The Last of Us PartⅡ(ラストオブアス2)』なぜマップが無いのに迷わずにゲームを進められるのか?

先週、ラストオブアス2の感想レビューをかきましたが、

今回はそこで取り上げた、

「なぜラストオブアス2はマップが無いのに迷わずにゲームを進められるのか?」

について分析をしていきたいと思います!

mokapurin.hatenablog.com

ノーティードッグのゲームのすばらしさを紐解きつつ、

 

ゲーム背景屋さんに役立つようなお話にもなればとおもいますのでお付き合い下さい。

なぜラストオブアス2はマップが無いのに迷わずにゲームを進められるのか?

私はゲームの背景を作る仕事をしていますが、いつも「ユーザーが迷わなくストレスフリーに遊んでほしい」というのをモットーにしています。

が、結構むずかしいのです、これが。

たとえば、進行方向を表すアイデアとしては、「標識」がありますが、

地面や標識で矢印だらけにするわけにもいきません。

標識が無いシチュエーションの方が多いですし。森とか、戦国時代、とかですね。

また、「ミニマップとかマップみればいいでしょ」なんて悲しい考えの人もいます…

それはプロとしてダメだと思うんですけど、それに頼ってしまう場合もあります。

しかし、ノーティードッグのゲームは、ミニマップもマップもありません。

洋ゲーによくあるコンパスすらないんです。いったいどうやってユーザーを進んでほしい方に導いているんでしょうか?

皆さんのカンに頼っているんでしょうか?それとも皆さんの運がいいから進める?

 

いいえ、違います。

これはノーティードッグのゲーム全般で実践されていることなのですけども、

答えが2つあります!

・限定カラーをガッチリ限定

・Follow the light ~光についていく~

ノーティードッグのゲームはこの2点についてとても丁寧に作られています。

以下限定カラーについて画像をつかって細かく説明します。

色だけで長くなりそうなので、Follow the lightについては、ライティング編で解説します。

限定カラーをガッチリ限定

ラストオブアスの前に、まずノーティードッグの代表作、アンチャーテッドの例をみてみましょう。

これはアンチャーテッド3のヤングネイトのゲームシーンです。

私がヤングネイト好きなのでここを選びました^^;

ここはネイトに対し

①扉まで行ってほしい
②扉は開かないので上にボルダリングしてほしい

という二つのゲーム要素があります。

ユーザーは果たしてそれが分かるでしょうか?

 

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uncharted3-01

もう画像を見てお分かりだと思いますが、

ノーティドッグのゲームでは「黄色」が誘導の色として限定的に使われている

のです。

以下の例では、道の端に黄色いラインが入り、(現実世界でも注意を促すためになってるところありますね)

壁にも手を掛ける場所に黄色が使われています。(これはちょっとわざとらしいですが)

また、ゲーム中気にしているとわかりますが、この黄色(誘導イエローと呼びましょう)を生かすために、同じ黄色は他にはほとんど使われていないことが分かります。

目立たせたいところに誘導イエローを使うのは結構簡単ですが、

他の場所に一切使わないようにするのは結構大変です。

しかし、そこまでやって初めてユーザーに「黄色は目印っぽいぞ?」という意識付けが行われるのです。

ラストオブアス2ではどうでしょうか。

ラストオブアス2では、誘導イエローはもちろん健在なのですが、

それ以外に「危険レッド」と「癒しブルー」も意味のある色として使われており、

イエローだけが目立ちがちになっていたアンチャーテッドシリーズより、より自然な視線誘導ができています。

また、無理に黄色をつかわず、無彩色の中に彩度の高い色を入れて注目させる、といった技もつかってますね。例を見てみましょう。

誘導イエローの例

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 ここはみんな大好き、紐と発電機のギミックです。ここはいつもの誘導イエローですね。これは見つけてもらわないとゲームが進みませんので、強い色使いをしています。

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 また、ここは地下鉄のシーンで、まっすぐ行くと行き止まりで、後ろ側に抜け道がある、というところです。こういったちょっとアナウンスしないとユーザーが気づかないかな?という所には誘導イエローがしっかり使われています。

危険レッドの例

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ラストオブアスの危険レッドはちょっとくすんだ赤で、主に「血の色」「ファイヤフライのエンブレム」に使われています。

上のファイヤフライのマークはアビーにとっての恐怖、トラウマですね。

また、血は血痕や血で書いた文字など、すごい怖いですが、血自体が誘導として使われている箇所がいくつかあります。

この赤があったら先に怖い事、嫌なことがあるよ、という誘導になっています。

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この鉄塔渡りのシーンは、まさに危険レッドがつかわれていて、アビーちゃんにとっては殴り合いの数十倍イヤな所なので、まさに危険レッドがその心情を表しているといえましょう。

癒しのブルーの例

今作でのブルーは、癒し…というのは言い過ぎかもしれませんが、上の誘導イエローや危険レッドに比べると、ポジティブな意味を含む青、ということで癒しブルーと呼ばせていただきます。

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たとえばこちらは大きな町の中の本屋なのですが、大抵の店は銃撃戦が起こったり、油断できないのですが、この店の中にはエリーをパワーアップさせる「本」というアイテムがあります。

まあキノコ人間もいるんですけども…^^;

危険なことばかりじゃないから入ってみて?という青の優しさを感じませんか?

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また、特に効果的につかわれているのがアビー編の水族館です。

ここはアビーが信頼を置いている元カレの家であり、アビーが安心できる数少ない場所の一つです。

他にも夜のシーンで青いシーンは沢山あるのですが、癒しブルーは緑がかった彩度の高いブルーなので、色が使い分けられていることがわかります。

無彩色の中の色

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こちらは序盤のシーンですが、右の家は扉が埋まって明らかに入れない、

左のトラックは高くてジャンプでは登れません。

正解は奥の青いトラックに上るのですが、周りに色が無いので、青いトラックに自然と目が行きます。奥に赤い家があるのもおそらく意図的だと思います。

今作ではこうした自然なカラー誘導が多いため、アンチャーテッドのような「お、またあの黄色ですね?」という感じがありませんでした。

それにより、リアルな世界への没入感が高まり、よりストーリーや戦闘を楽しめる仕掛けになっているのだと思います。

でもノーティドッグさん、ここはどうなの?

プレイしていて感じたのですが、エリー編はカラー誘導がものすごくしっかりされていて、私は一度も迷うことがありませんでした。しかし、アビー編はリアルさを重視したのか、誘導イエローの出番が少なく、ちょっと迷ってしまう箇所が何度かありました。

意図的にへらしているのかな…?

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たとえばこのシーン、正面の扉が封鎖されていて、右の窓から入るのですが、

これ、エリー編や、アンチャーテッドなら絶対やらない色づかいです。

最初のヤングネイトを思い出してください。

また、エリー編なら右の窓枠になにかしらの色を入れて誘導させるはずです。

もしかして、「アビー編感情移入できない!」という方が多いですが、視線誘導の不十分さがイライラを高めているのかもしれません。

1回ぐらいならいいですが、なんども迷うとチリツモで結構なストレス…ひいては「クソゲー!」の叫びにつながってしまいます。

ノーティードッグさん、どうなんでしょうか??

アビー編はもうちょっと誘導にこだわってほしかった…です。

 

以上、いかがでしたでしょうか?

アビー編はともかく、エリー編の色使いはかなり意図的に設計されていることが分かります。

逆に、ノーティードッグのゲームで迷ったら、この色の法則を思い出すと活路が見いだせるかもしれませんね。

ラストオブアス2、「なぜマップが無いのに迷わずゲームを進められるのか?」

限定カラーについての解説でした。長々と読んでいただきありがとうございます。

 

 

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